どうも、Jack です。
1. はじめに昨年11月に「
Apple Accent」という、アップルをテーマにした音声ポッドキャストを配信し、約9ヶ月が経過しました。その間ほぼ週に一度配信しており、これまでに34回の配信を重ねました。そのけっか、「Podcasting Juice」の
バナー記録によれば、42,000人の方に購読して頂きました。この数字は重複を含むものでしょうから、全員が聴いているとは限りません。しかし、この7月だけを取り出してみますと、6,800人の方が新規登録してくださいました。これはすごい数だと言えると思います。
もちろん数字がすなわち番組の魅力や質を表すものではありません。しかし我が「Apple Accent」はそれなりのアテンションを獲得することには成功しているといってよいと思います。これもひとえにこの番組を聞いてくださってるリスナーの皆様のおかげです。心より御礼申し上げます。

「Apple Accent」は、「
ringo-sanco」のfuji ryuichiro(ryu)さん、「
BittenMac Log」のmbp0804(Bitten)さん、そしてボクJackの3名による音声ポッドキャストです。ボクの担当は、ポッドキャストへの出演に加え、編集作業です。今回、購読者が42,000人を突破したということを受けて
、「ポッドキャスト制作のすすめ (Apple Accentの作り方)」と題し、ポッドキャストの制作方法をお伝えしたいと思います。
ポッドキャスト制作の裏側をこれまであまりブログで書いたりしてきませんでした。それは裏話などをするよりも、「番組の内容で勝負!」という思いがあったからです。しかしここへきて、「Apple Accent」の舞台裏をあえてお見せすることで、ポッドキャスト制作に興味を持つ人を増やせるのではないかと思い直すようになりました。もっと多くの人にポッドキャストを制作の側から楽しんで欲しい。そのためにボクのこの拙い経験も少しはお役に立てるかもしれないと思いました。
ポッドキャストの制作は本当に簡単です。本エントリを読んで、ポッドキャストを作ることは案外敷居の低いことだなと捉えていただければ幸いです。「Jack程度ができるのだから、おれも、わたしも」と思ってもらえるのではないかと思います。また GarageBandがポッドキャストを作るのに適した、使いやすいソフトウェアであることも知っていただければと思います。
本エントリでは、
ポッドキャスト制作のきっかけ、ポッドキャスト制作の準備、実際の収録作業、ポッドキャスト用の機材、録音後の作業、以上の順序で述べます。
2. ポッドキャスト制作のきっかけこの項では、ポッドキャストを作ったきっかけについて述べます。それにあたりまず、ボク自身がラジオファンであることについてお話しします。ボクは昔からラジオが好きです。毎朝晩、ラジオの電源を入れます。AMもFMもどちらも好きです。好きなパーソナリティはと聞かれれば、即座に10人挙げることができましょう。音声メディアであるラジオにはまだまだ可能性があると信じています。たとえばブッシュ大統領は毎週ラジオ演説を行っています。ホワイトハウスのホームページから
演説のmp3がダウンロードできます。音声メディアの力がアメリカでは強いことの証左と言えると思います。通勤や家事などのときでも楽しめるラジオは今後もその魅力を保ち続けて行くことだと確信しています。

ボクがポッドキャスト「Apple Accent」を作りたいと考えたきっかけは、かつて
AFN(米軍放送)を聴いていたことにあります。AFNではパソコンの話題のみを扱う番組がありました。電話の向こうにいるリスナーが「Windowsパソコンでこういうことをやりたいんだけど、どうすればいいんだ?」という問いに対して、女性パーソナリティが「そのときはね、コントロールパネルを開いて、ここのアイコンをクリックして、設定をこうすればいいのよ」というのを聴きました。面白い。パソコンの話題だけでラジオ番組が成立してしまうというところに、日本のラジオ番組では感じたことのない魅力があり、ずっと印象深く心に残っていました。
2006年5月、リリースされたばかりのMacBookを購入してアップルの魅力に取りつかれたボクは、2006年11月にはアップルに関するブログを書くようになっていました。そしてブログだけでは飽き足らず、「かつてAFNでやっていたようなパソコンのラジオ番組を、そしてアップルに特化したラジオ番組を聴きたい!」という欲求が自分のなかで高まってきました。たとえば「iPodは他の人はどうやって使っているの? Macはどうやって活用しているの?」そのような情報を配信する雑誌やブログ、本はごまんとあります。しかし音声で配信するメディアはほとんどありませんでした。そこで「ないならば自分で作るしかない!」と思い立ちました。

ボクはポッドキャストをブログの延長線上としてとらえました。市井の人びとがブログをたくさん書いています。しかし、パソコンやケータイなどで読むのは目が疲れるときだってあるでしょう。耳で話題を楽しみたいというケースも大いにあるのではないでしょうか。そのような思いでポッドキャスト制作の構想を練りました。
コンセプトはいたって単純なのです。「
アップルの話題に終始した、楽しいトーク番組を作ろう。雑談でもいい、アップル好きによる話を録音し、ダンサブルな音楽をブリッジとして挿入すれば番組として成り立つだろう。そうすればアップルファンが面白がってくれるに違いない!」と考えました。
そこでボクはポッドキャスト編集機能が追加されたGarageBand 3(iLife'06収録)を利用してポッドキャストを制作することを構想しだしました。この優れたソフトウェアがなければ、自分でポッドキャストを作ることなど考えられなかったでしょう。2005年6月、iTunes Ver. 4.9がポッドキャスティング機能を実装し、さらに2006年、GarageBand 3がポッドキャスト制作に対応しました。ここでボクがポッドキャストを配信できる外部状況が成立しました。
3. ポッドキャスト制作の準備この項では、ポッドキャストの収録の手前までの過程をお話しします。まずポッドキャスト制作にとってもっとも重要なことを述べたいと思います。それは、
ポッドキャストの魅力は、9割方、話者(キャスター)の力量にかかっているということです。ラジオにおいてと同様、ポッドキャストにおいても、番組の面白さは話者の実力に大いに依存しています。
ポッドキャストを構想しだして、ボクは、ほかに2人のキャスターが欲しいと思いました。
素人のポッドキャストの番組では、構成人数は3人でなければならないということはよく留意される必要があります。「三人寄れば文殊の知恵」といいます。「Three is the magic number.」ともいいます。ボクたち普通の人々は、得手不得手はあれど、しゃべりのプロではありません。マイクに向かってしゃべれといわれてしゃべれるわけがありません。しかし素人でも、特定のテーマ(ここではアップル)について、3人が集まり、話すならば、適度な緊張感と笑いが生まれます。これが番組を面白くする要素となります。(次点で4人でやるのはよいと思います。)

なお、ポッドキャストを1人でやる場合は、相当に事前準備を重ねる必要があります。ボクもかつて1人でポッドキャストをやっていましたが、これは大変な作業でした。用意したキューシートを「いかにも読んでいます感」が漂うと、これは興ざめです。話し手の力量が強く求められます。トークのプロには向いていますが、素人にはまずお勧めできないといっていいでしょう。
ポッドキャストを2人でやる場合は、これも準備の負担がかかりましょう。漫才師が2人のコンビで面白いのは、裏で練習をきっちり積んでいるからです。2人でやっている「
Apple news radio ワンボタンの声」が面白いのは、興味深いニュース素材をあらかじめピックアップしてあるからです。ここでは、ニュース素材が3人目の話者として番組に登場しているのです。
なおあまり例がありませんが、5人以上は話者のキャラがそれぞれ相当に立っていないと番組が崩壊します。素人にやれる領域ではないです。意味がないのでやめておくべきです。
上記でご説明しましたように、ボクのほかに2人キャスターを選ぶことにしました。まずボクの構想する「アップル専門のポッドキャスト番組」ということで、テクノロジーに明るい、理系の大学出身者が欲しいと願いました。たとえばアップルの「AirMac Express」という商品があります。

これについて語るとき、スペックや値段、デザインなど切り口は様々ありますよね。しかし、無線LANとはなんなのか、あるいはTCP/IPとはなんなのかについて、きっちり大学で科学技術についての学問的訓練を受けた人がそのような商品を語ったばあい、その話には深みが出ます。これが番組の味となります。いっぽうで、カタログだけをみて「AirMac Extreme」や「Time Capsule」とはスペックではここが違うね、などと表層面のみを語るのでは、情報伝達という意味では悪くはないけれど、さほど面白くもないのです。
さらに、もう1人のキャスターは学生を入れたいと考えました。学生の若いパワーを吹き込むことで、mbp0804さんとボクという30代サラリーマンの持つ、ある種の「予定調和」を崩したかったのです。学生は学問的な、抽象的な概念について考える機会をふんだんに持っています。学生というある種の有閑階級からみたアップル製品という視点を盛り込んでいきたいと思ったのです。
アップル製品しか知らないひとは、アップル製品を語ることができません。いろんな幅広い知識があってこそ、アップル製品を魅力的に語れるのです。話者のもつ多様なキャラクターがポッドキャスト番組の面白さにつながるということもきわめて重要です。
また
ポッドキャスターは良質な情報のアウトプットを行っている人でなければならないことは十分理解される必要があります。たとえば学校の先生や、文筆業など、情報のアウトプットをつね日頃から行っている人でなければ、ポッドキャストで面白いことは話せません。いちばんてっとりばやいのは、良質なブログ記事を書いているブロガーをポッドキャスターにすることです。書くということを普段からやっている人は、情報の裏を取り、正確であろうと努めます。正確だからこそ、話も安定します。どこかで聴きかじった話をしゃべるのと、自分がしたためた話をしゃべるのでは安定度も面白みも異なります。
優れたポッドキャストの条件はその情報が正確であることも改めて確認しておきたい事項です。

以上の理由から、以前から優れたブログ記事を連発していたmbp0804さんとfuji ryuichiroさんをメンバーにお誘いしました。メールを交換したり、Keynoteでプレゼンの資料を作ったりしました。そのなかでポッドキャストの方針について話し合い、番組名を「Apple Accent」と決め、番組としての意思統一を図っていきました。
重要なので繰り返しますが、このポッドキャスターの選定の作業がもっとも重要です。
ポッドキャストの成否はキャスティングをどう行うかにかかっています。いいかえるなら、キャスターの才能のある人を見抜くセンスがここで問われます。
4. ポッドキャストの収録無事にメンバーが揃いました。あとは収録するだけです。iChatアカウントを全員取得し、顔を見れる状況で音を録ります。iChatの音質が悪く、音声が聞き取りづらければ、全員が別途Skypeの音声を立ちあげて、iChatの音声をミュートにします。(SkypeはiChatより高音質です。)

そして、各人がQuickTime Pro (もしくはAmadeusかGarageBand)を立ち上げて、それぞれ自分の音声のみを収録します。ここで
キューシートを用意すると、特に初回の収録はスムーズに進むことでしょう。ボクはいまでもキューシートを書くときがあります。
用意が整えば、トークを収録します。ここでメンバーは、3人いても、実質2.5人であるということは強く意識されるべきです。きちんと収録できているか、時間は流れどおりか、話足りないことはないか、話題の転換はどうするか、など進行役がよく考えながら進めていきます。
収録で大切なのは、
「うまくしゃべらなくていい」という姿勢です。変に滑舌よく、カッコよく話そうなんてしたって、素人にはできっこありません。もちろん滑舌が良いに越したことはありません。しかしニワカ仕込みではプロのように上手くいくはずがありません。ただ、自然体にしゃべればいいのです。下手でいいのです。自然にただ3人で話すこと。専門的なテーマ下では、それだけで次第にトークにグルーヴ感が生まれます。
5. 機材について機材に関して述べます。内蔵マイクのついたMacと、GarageBand 3か4があればあとは不要です。余計なお金をかける必要はありません。買い物に費やす労力は編集作業に傾けられるべきです。
(1) マイク
ただ、内蔵マイクでは音声にノイズが載る、あるいはこもった感じがすると感じた場合は、外付けマイクを考慮してもよいでしょう。オススメはプラントロニクス社の「
.Audio500USBマルチメディア用マルチタスクヘッドセット」です。

ボクはこれを利用して音声を収録しています。このヘッドセットは Skype 公認で、USB接続ですので、Mac でも使えます。8000円弱とすこし高いですが、この値段以下のモデルだと逆にノイズが出て、録音にはつかえないなどという状況もあります。いろいろ調べて、プラントロニクス社の製品は評判がいいことが分かりましたので、これを買いました。たとえば最新の配信でボクがしゃべっている声はこのマイクを通して収録されています。結構きれいですよね。
Mac内蔵のものを使った場合に比べて、.Audio500USBヘッドセットを使うと、収録したトークのトラックのノイズ除去の作業が軽減されます。また、スイッチでマイクのオン/オフや音量コントロールができるのが便利です。
(2) ジングル
ジングルはGarageBand付属のアップルループをそのまま使ったり、あるいは加工したりすればいいですが、「付属のアップルループはわりといろんなところで聴かれるから違うのが欲しい」という場合もあろうかと思います。そのときは、「
Logic Studio」を使えばいいです。Apple Accent のジングルはすべてこのLogic Studioに付属のApple Loopを利用しています。

やや高価なソフトウェアスイートでポッドキャスト制作だけに使うのはもったいないぐらいですが、かなりオススメです。18,000種類のApple Loopが入っているため、使いきれません。
すでに発売されているJam Pack 5枚の内容が可逆圧縮形式で収録されていますので、Jam Packをバラで買っていた人にもオススメできます(Vocalsは入っていないことに注意してください。)
(3) 便利なオンラインウェア
なおオンラインソフトウェアの「
Audio Hijack Pro」があると何かと便利です。使い道はいろいろありましょうから、ここでは深く言及しないでおきます。
6. ポッドキャスト収録後の作業 (ポストプロダクション)収録が無事に終了すれば、GarageBand 3か4に音声ファイルを3本読み込ませ、1本のプロジェクトファイルを作ります。好きなラジオ番組を参考にしながら、ポッドキャストの構成を考えるとよいでしょう。このポストプロダクションを丁寧に行うことが、リスナーにとって重要です。トークの内容もさることながら、聴きやすい音声ファイルを作り挙げるという視点が必要です。
以下、ボクが気をつけている点を述べます。
a) 3秒間空白が開いたら削除する。(詰める)
b) 咳払いなど不快な音はできるだけ削除する。編集の過程でプツっという音もきっちり処理する。
c) トークがかぶった場合は、整合性がとれる範囲で、片一方の音をずらすか、削除する。
d) わかりやすさ・面白さのために、整合性がとれる範囲で、トークの順番を大きく入れ替えてもいい。
e) コンプレッサをかける。

f) ビジュアルEQをかける。

g) スピーチエンハンサをかける。


(ノイズがあれば Loud noiseのスライダを動かしてやります。)
h) RLに振る。(パン。+20, -20にしています。)

i) ジングルトラックのボリュームは -9ぐらいにする。
j) ダッキングは自動ではなく、自分の手でやる。
k) エコー/リバーブは、特定の意図を持たない場合、使わない。編集が終わったら AAC(かmp3)で書き出します。MacとiPodの両方で聴き、作成した音声を確認します。このとき、できるだけ客観視して聞きます。作品に対する思い入れはいったん捨て去り、「この野郎!」という気持ちで、厳しくチェックします。粗を探して、修正することで、音質のクオリティを高めます。(これをしないとリスナーからクレームがすぐにでます。)
また拡張機能(チャプタ機能)は非常に優れた機能ですので、ぜひ活用したいです。40分の番組ではチャプタ機能をつけないと聞き手が飽きてしまいます。(聞き手に辛抱強く40分聴いていただけると思うのは間違いです。)
制作したポッドキャストは少なくとも10回は聞き込み、細かく修正し、タグを付けてやります。そして配信します。以上で終了です。
7. 終わりに以上で、ポッドキャストの制作についての説明は終わりです。ブログを書くのと同様に、案外単純な作業であることがご理解いただけたのではないかと思います。専門用語がちょっとでてきましたが、まずはそこは飛ばしてください。けっして複雑なことはなにもありません。「ラジオってこうやって作るんだろう」というイメージのまんま制作できます。またアップルストア銀座の
One To Oneのスタジオクラスでポッドキャスト制作講座もありますので、参加してもいいです。
MacとGarageBandやSkypeがあれば、誰でもすぐにポッドキャストが作れます。アップルに関する音声ポッドキャストは「ワンボタンの声」や「
Exit to Mac」などがありますが、まだまだ増えてきていいと思います。ブロガーの数だけポッドキャスターがあってもいい。
さらにテーマはアップルに限らないでしょう。さまざまな切り口でポッドキャスト制作を楽しむ人が増えてくればと思います。どんなテーマでもポッドキャストになります。例えば、個人的には「たいやきポッドキャスト」「新宿伊勢丹メンズ館ポッドキャスト」「断層ポッドキャスト」などのテーマがあったらぜひ聴きたいです。ブログといっしょで、ポッドキャストもテーマは自由なのです。ポッドキャストの自由な空間はまだまだ開拓の余地があります。人間の生の声は、文字よりもパワーがあります。感情をより細かく伝えられます。
ポッドキャスト制作の第一歩は、ポッドキャストの制作を構想することです。この秋、「こんな番組があったらいいな」と考えてみることからまずは始めて見ませんか? ラジオごっこ、楽しいですよ。
Special thanks to: mbp0804さん・fuji ryuichiroさん・Apple Style所長さん・+.kだいひょうさん・stratosさん・アマノ湯さん・Momoko Kikuchiさん・佐藤愛さん, and all the AA listeners!!Many thanks to: グッグさん@マク!!